アプリをストアにリリースした後、ストアの評価はとても気になります。
中には辛辣なコメントと共に★1を付けるユーザーもいて、精神的に色々辛い気分になります。
自分のアプリの場合、iOS よりも Android のほうが評価が悪く、ユーザー層の違いによるものなのだと諦めていたのですが、Google Play In-App Review API を使うようにしただけで、劇的に改善しました。
今回は Google Play In-App Review API を使って評価を改善した話を紹介したいと思います。
iOS と Android のストア評価
自分のアプリの場合、 iOS はリリース直後から評価が高く、リリースして2年以上経過しても ★4.8 前後で安定していました。
しかし、Android はどんどん低下していって 2020年10月頃にアプリ最低記録の ★3.7 ぐらいまで下がりました。
ユーザーがアプリをダウンロードするかどうかの基準として、「評価が★4を超えているどうか」は重要なポイントと言われています。
★3.7 まで下がったので、「これはもう今後は下がる一方かな」と諦めた時期がありました。
iOS/Anroid でアプリの機能の差は全くないので、完全にユーザー層によるものと判断したんですね。
In-App Review API の導入
ところが、あるとき以下の記事を発見しました。
なんと、In-App Review API を使うようにしたら1ヶ月半ほどで★2.2から★4.2まで改善したというのです。
これには本当に驚きました。なんでそんなことが可能なのか?
In-App Review API はまだ導入していなかったので、とりあえず自分のアプリにも導入することにしました。
公式のドキュメントは以下にあります。
導入はとても簡単で、ドキュメントの通りに build.gradle に設定を追加し、 ReviewManager 関連のAPIを使ってレビューリクエストを出すようにするだけです。細かい技術的な話は、ここでは書きません。
このAPIを使うと、iOS の SKStoreReviewController で表示させるのと同様に、アプリ内でレビューを付けることができる画面が表示されます。
レビュー誘導処理の変更
自分のアプリの場合、以前は以下のようにしていました。
- ある程度プレイしたユーザーに「いつもプレイしてくれてありがとうございます。楽しんでいますか?」<はい|いいえ>のダイアログを表示
- 「はい」の場合
- 「ぜひレビューをお願いします!」<ストアへ移動|あとで>のダイアログを表示
- 「ストアへ移動」を押すと、ストアのレビュー画面を表示
- 「いいえ」の場合
- 「よろしければご意見フォームに記入をお願いします」<フォームを表示|断る>のダイアログを表示
- 「はい」の場合
つまり、事前にアプリに対してポジティブなユーザーかどうかをチェックし、ポジティブなユーザーにだけレビュー誘導し、ネガティブなユーザーにはレビュー誘導の代わりにご意見フォームに誘導していました。
In-App Review API を使う場合は、Google Play In-App Review API に記載されている以下のガイドラインに従う必要があります。
https://developer.android.com/guide/playcore/in-app-review?hl=ja#quotas
- 有用なフィードバックが得られるように、ユーザーがアプリやゲームを十分体験してから、アプリ内レビューのフローを開始する。
- ユーザーに過度にレビューを求めない。この方針により、ユーザーの不満を最小限に抑え、API の使用量を抑えます(割り当てに関するセクションをご覧ください)。
- 評価ボタンや評価カードを表示する前または表示中に質問をしない(「アプリを気に入りましたか?」といったユーザーの意見に関する質問や、「このアプリを 5 つ星と評価していただけますか?」といった予断を与える質問)。
これらのうち特に3つ目が重要で、「いつもプレイしてくれてありがとうございます。楽しんでいますか?」のような質問を出すのはダメということになります。
そのため、自分のアプリでは以下のように処理することにしました。
- 端末が In-App Review API に対応しているバージョンの場合
- ある程度プレイしたユーザーに対して In-App Review API でのレビューリクエストを実行するのみ
- 対応していないバージョンの場合
- 従来と同じ方式
レビューリクエストはAPI呼び出しのたびに表示されるというわけではなく、以下の記述があります。
優れたユーザー エクスペリエンスを提供するため、Google Play では、ある一定期間中レビュー ダイアログをユーザーに表示する回数に対して上限を設けています。この上限のため、短期間(たとえば 1 か月未満)に
https://developer.android.com/guide/playcore/in-app-review?hl=ja#quotaslaunchReviewFlow
メソッドを複数回呼び出すと、ダイアログが表示されないことがあります。
つまりレビューリクエストを実行した際に実際にレビューダイアログが出るのかどうかの保証はなく、どれぐらいレビューダイアログが表示されているのかの情報を分析ログに出すこともできなくなりました。
いままでは、「楽しんでいますか?」などの回答結果を分析ログに出すようにしていて把握していたのですが、その辺り一切の情報が取れなくなりました。
少し不安でしたが、In-App Review API を使うことで改善するはずと信じてアプリを更新しました。
In-App Review API を使うようにしたことによる評価の変化
結果的に、★3.7 から ★4.4 まで回復させることができました。
導入したのが2021年10月頃で、この記事を書いている時点(2022年11月)で導入直後のデータがもう確認できない(Google Play Console では過去1年分しか見れない)のですが、導入して1ヶ月後ぐらいの時期からの評価の推移は以下のグラフの通りです。
これだけ見てもよく分からないと思うので、横軸方向に圧縮したグラフがこちらです。
導入1ヶ月で ★3.7→★4.08 ぐらいに上がっていました。
(注: Google Play Console の統計情報では小数第二位まで表示されます。ストアでの表示は★4.1)
その後は約半年かけて★4.4まで上がりました。
この期間、せいぜい月に1回程度しか更新していませんでしたが、レビュー誘導の仕方を変えてほぼ放置してただけで★3.7から★4.4まで上がったことになります。
今まで、少し機能追加したぐらいではほとんど評価に影響がなかったことを考えると、これは驚異的な効果と思います。
In-App Review API を使うとなぜ評価が上がるのか?の考察
リリース直後から、iOS と Android の評価の差が大きい点についてずっと疑問に思っていました。
ユーザー層の差があるとはいえ、★4.8と★3.7 ほども差が出るのものなのかと。
色々考えて、到達したのが以下の仮説です。
ユーザーはレビューをする際、他のユーザのレビュー評価に大きく影響を受けるのではないか?
つまりこういうことです。
iOS の場合は、SKStoreReviewController で表示させるので、アプリ内でレビューダイアログが表示されます。その際、他のユーザーのレビュー内容などは見えません。そのため、自分の感想のみをベースに評価が行われます。
Android の場合、In-App Review API 導入前は前述のようにストアのレビュー画面を表示させるようにしていました。その結果、自分の感想をベースに評価を行う前に、他のユーザーのレビューは評価値の平均値を目にすることになります。特に、低評価がついているとそれに「いいね」をするユーザーが多くいるため、レビュー前にそのようなネガティブな評価状況を見ることなります。その結果、仮に★5でつけようと思っていても「あれ、★5付けてる人少ないのか、じゃ★4にしとこう」など低めの評価をしてしまうのではないかと思います。
しかし、In-App Review API を使うようになったことで「他のユーザーのレビュー」を見ることがなくなります。その結果、★5をつけようと思っていたユーザーは他のユーザーの意見に影響されることなく★5を付けることになります。
つまり
- ★3.7 は他のユーザーのネガティブな意見に左右されて評価を付けた結果
- ★4.4 は純粋な感想を評価に反映させた結果
ということなのではないかと思います。
iOS★4.8 と Android★4.4 と差が縮まったわけですが、これは「ユーザー層による差」としては妥当な数値なのではないかと思います。
まとめ
Android の Google Play In-App Review API で評価が改善した話と、なぜこれを使うことで改善するのかの考察について紹介しました。
Android のアプリの評価で悩んでいる場合は、In-App Review API を使うようにするだけで改善する可能性が高いので、ぜひ導入してみて下さい!
コメント